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Y面子のお話。随時更新します。
それぞれの背景とか出会った切っ掛けとかそのへんを適当にちゃちゃっと
発つ狐、後をそれなりに濁す
Lilith
腐らない腐れ縁(new)
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俺…リュミエールは家出を決意した。
とはいえ拗ねたという程の幼稚なものでは無く、かといって復讐という程の大それたものでも無い。頭に血の上った幼馴染に、冷水をいくらかぶっかけてやろう…それくらいの気持ちである。
だから俺は、生まれこそしていないものの幼い頃から暮らしてきたクリムの家と、ふたりの幼馴染、親友、あとなんかその他諸々を捨てる事にしたのである。
「…本当に、行くのか?」
夜明け前、最低限の荷物…即ち武器である杖と、少しばかりの金を持ち、正門から出て行こうとする俺を待ち構えていたのは、他でもない親友、エデッサであった。馬鹿力を生かして用心棒という名の荒事担当をしているから、大方門番の仕事を回されたのだろう。
「ああ…でも怒ってる訳じゃない。数年したら戻るかもしれないな。」
「残念だ。一緒に酒を飲める相手が居なくなる。」
「なに、お前が飲みたいなんて誘ったら、大抵の奴が喜んで相手してくれるだろうよ。」
「冷たいねえ…俺はあんたがいいんだけど。」
くすくすと笑いながらもエデッサはやたらと豪奢で重い門を、片手で開ける。実は脇の小さな扉からコッソリ出るつもりだったのだが、どちらにしろ出られるのならば良いだろう。
「嬉しい事言ってくれるね。…それでも、付いては来ないんだな。」
「付いて行きたいのは山々なんだが、俺にも体裁があってなあ…」
エデッサは親の代からクリムに仕える古株である。脳筋で自由奔放な奴だと思っていたが、やはり色々と思う所もあるらしい。
「まあ、また縁があったら飲もうや。」
そう言いながら俺はエデッサの横を通り過ぎ、門から出る。
「…元気で。」
「そっちもな。」
ひらひらと手を振りながら、俺は歩き出す。少しだけ震えた声を背にして。
振り返ればエデッサは泣きそうな顔をしているのかもしれない。だから俺は振り返らなかった。普段馬鹿をしている分、素面を見られる事を何よりも苦手としている奴なのだ。後ろ髪を引かれる思いではあるが、戻るつもりは無い。
やるしかないのだ。今更引き返すのは俺の美学に反する。
さあ、何から始めようか。
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俺の目的というのは結局の所、幼馴染であり、主であるヴァニタートに一泡噴かせる事なのである。
元来我儘で自己中心的な奴ではあった。それでも、三年前から、あいつは幾人もの職と住まいを奪い、一部の者に至っては命をも奪った。勿論、そうなるだけの理由が無い訳では無かったから、反感を持つ者は…恐らく、少なかった。
だが俺にはどうしても、ヴァニタートという幼馴染がそんな強行に及んだとは信じ難く、きっと何か理由があるのではないか。そう思って調査をしてはいたのだが、つい先日の事、その全てはヴァニタート本人の手によって焼却された。
それでも覚えている事がある。三年前、ヴァニタートが豹変したあの日。俺と、ヴァニタート、そしてもう一人の女で話をした。他愛も無い話をしたと思う。ヴァニタートが変わったのは、そいつが去ってからだった。
俺の目的はその女を探し出す事。
そしてもう一つ。暴虐を繰り返すヴァニタート…クリム家への、反乱である。
(まずは仲間だ…俺ひとりでは出来る事に限界がある。)
あの家から追い出された者は多い。ヴァニタートに反感を持っている者もいるだろう、そういう奴を集めに行くのだ。調査資料を焼却されてしまったから、住所や詳細な生い立ち等は一部しか覚えていないのだが…まあ何とかなるだろう。
「…ねえ、そこの子。」
「うん?逆ナン?」
うんうん唸りながら歩いていると、紫色の装束に身を包んだ女が声を掛けてきた。唸り過ぎてつい反射的に答えてしまった。
「いいえ、あまりにも唸っていたものだから。あのまま歩いていたら貴方、落ちてたわよ。」
女は進行方向の2メートル程先にある川を指差す。
「…助かった。」
「いいえ、どういたしまして。」
年の頃は俺よりいくつか上だろうか、レメネリーと名乗ったその女は、昔からあてのない旅をしているそうだ。降りかかる火の粉を払う程度の実力はあるという。
「…貴方、面白いのね。いいわ、付いて行ってあげる。」
…色々すっ飛ばすとレメネリーは俺の仲間になった。
(なんというノリの良さ…)
名家であるクリムに刃向おうなんて馬鹿げた話だろう。というか俺も本気にされているとは思っていない。秘策はあるがまだ実現段階では無く、そもそも出会ったばかりのこの女を信用するのはまだ早い。勿論俺の目的についても、ある程度ぼかした上で話している。
「よろしくね、リュミエール。」
レメネリーは見るだけで目の保養になる程度の美人だ。暫くは困らないな…
そして次の日の朝、俺の全財産と共にレメネリーも消えていたというのはまあ、仕方の無い事なのだろう。
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「おい!来てやったぞ!さっさと起きろこの色魔!!」
「痛ってえええええ!!!」
アニィという女は顔に似合わず暴力的である。もはやこれは詐欺といって良いのではないだろうか?平均よりも可愛い方の顔で寝起きに人の顔を踏みつけるのはこの俺でもどうかと思う。スカートの中が覗けるのであれば少しは報われるというものだが、このアニィの鉄壁スカートはそういうわけにいかなかった。まあこいつのパンツに興味はないが。
「はあ…呼んでおいてぐうすか寝ているのか。しかも女を連れ込んで…」
腐れ縁であり、俺の女癖の悪さを知っているアニィは早合点しているのか盛大な溜息を吐いているが、俺の隣で眠るミーミルとはまだそういう関係に無い。というかレメネリーのせいで今の俺は若干の女性不信に陥っている。弁解するのも面倒なので放って置くが。
「お前は昔っからそうだ。人を出迎えるときにきちんと起きていた例がないな。今回は情事の最中で無かっただけまだマシか。」
「起き抜けで説教は勘弁してくれ…」
この見た目でアニィは俺よりも年上だ。同年代ではあるが、そのせいかやたらと説教くさい所がある。鬱憤をぶつけているだけの様にも思えるが、構うと更に黒歴史を掘りだされるので黙っておくしかないのが悔しい所である。
「…ともかく、来てくれた事には感謝する。」
「…素直だな。」
アニィは豆鉄砲でも食らったかのような顔をする。
「素直でおかしいか。」
「いや、良い事だな。」
今度は手を組んで頷きながら、ものすごく満足気な顔をする。
「…そうか。」
「お前もいい子になったものだな。」
そして慈愛に満ちた目でこちらを見てくる。
(なんかムカつく…)
「それはそうと…お前、何する気なんだ?」
ムカつくと思ったのも束の間、アニィは深刻そうに顔を近づけてきた。まあ、疑問に思うのは仕方ないだろう。10年以上暮らしてきたクリムの家と決別し、そうしてアニィを呼び寄せた。男女の慰め合いだとか便利グッズ開発とは話が違うという事を、何となく察していたようだ。流石は腐れ縁である。
「ま、それは追々な。」
「………ああ。」
…いかにミーミルがこれまで壮絶なアホっぷりを発揮してきたと言えど、その全てが道化である可能性はゼロではない。今も隣でぐうすか寝ているように見えて、耳を欹てているかもしれない。アニィも俺の意図を察したのか、それ以上追及はしてこなかった。
「ありがとな、アニィ。」
「…まあ、こうして来てやったのはお前の為では無い。お前には色々と恩があるからな。返さない訳にはいかない。」
「そうだな、俺に恩を売りっぱなしだと何があるか分からないからな。」
「そうだ。これはお前の為では無く私の為だ。そこの所!よく分かっておくように!」
アニィは早口でまくしたてるように言い放つ。少し顔が赤いから照れているのだろう。どんな暴力女でも可愛いところがあるものだなあと思うが、言ったらまた蹴られるに違いない。ここは黙っておくことにしよう。
そういや、ミーミルはニンジャを目指すだなんだ言っていたが、もしこれが全て演技でないのならば、その道のりは遠そうだ。この女、いつになったら起きるというのだろうか…
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